トップMBAに合格するためには、結局何が必要なのでしょうか?これは、かなり際どい質問です。なぜなら、多くの人にとって、受験前から、「あなたの置かれた状況はかなり不利な状況ですよ」と知らしめるようなものだからです。受験予備校やカウンセラーは、受験生に諦められると困るので、もちろん本音などいいません。
私も、そのような「既にとき遅し」という状況にうすうすと感づきながらも、自分自身その事実を見つめて、自分なりの戦略を考えるまでに、多大な時間を要したのはいうまでもありません。
独断と偏見を恐れずに、トップMBA合格のために必要な10コの要素を重要な順に並べると以下のようになります。イメージとしては、以下の10個の要素の総合評価で、同一プールの受験生と比較されます。アドミッションのプロセスは、絶対に不正が許されないところですので、恣意性は一切排除されます。あくまで、様々な要素を数値化し、総合点が一定以上上回り、致命的な欠陥がない人だけ、合格することができるのです。以下は、アドミッションが重要視しており、さらに、日本人にとって差別化を図りやすいものを中心に列挙しています。
1.職歴
2.スポンサーの有無、奨学金の有無
3.GMATの点数
4.賞などの受賞歴
5.エッセイ
6.TOEFLの点数
7.英語スピーキング力(面接)
8.ユニークな海外での経験
9.出身大学、大学での成績
10.推薦状
01 職歴
非情ではありますが、アドミッションはブランドが大好きなのです。日本企業のことなどはほとんど知らないアドミッションの思考回路は、「大企業」=「優秀な人」。「中小企業」=「優秀ではない人」という安易なもので、履歴書で最初の印象が決まってしまうのです。あなたが、どんなに優秀なビジネスパーソンであったとしても、日本企業を知らないアメリカ人を受験書類だけで説得するのには無理があるのです。職歴として高い評価を受けるケースは、MBA卒後の就職先となる外資系会社、もしくは、日本の売上規模が大きい会社。例えば、世界的に有名ではないですが、当社の売上高3兆円ありますといえば、アドミッションも簡単に理解してくれるのです。特に、外資系戦略コンサルティングファーム、投資銀行は、MBA卒の花形就職先ですので、トップビジネススクールは好んで合格を出す傾向にあります。
もちろん、最近はダイバーシティを重視していることもあり、いわゆるコテコテのエリートのみを採用する風潮は薄まりつつありますが、ユニーク枠で採用されるためには、相当尖っていないといけません。逆に、「ベンチャー企業の経営者をやっていました」というのは受けがよく、MBA受験ではプラスに働く傾向があります。
02 スポンサーの有無、奨学金の有無
2011年度は私費苦難の時代で、2012年はその反動もあってか、私費受験生の合格率が上昇しましたが、会社派遣の受験生の優位はあると認めざるを得ないと思います。大学側のロジックとしては、「大企業の社内選抜を勝ち抜いた優秀な人材だから、将来は社長候補間違いなし。是非、当校に入学してもらおう。」というものです。社費生の方は、1年延期というオプションはないわけで、このアドバンテージを最大限生かす受験戦略を練るべきです。
一方、私費生は、「留学資金はあるのか?卒業後仕事はちゃんと見つけられるか?」といった疑念を持たれ、であれば、「社費生でもとっておくか」という判断になりがちです。私費生であっても、「将来すごい人になりますよ。」というアピールができるようにしなければ、社費生に対峙できるわけがないのです。
私費受験生の方でも、奨学金が付くと、アドミッションの受けが全く変わります。合格発表後、ウェイトリストだったが、アドミッションに奨学金獲得の連絡をいれたら、その翌日にウェイトリストから繰り上がり合格したという方の話を何人からも聞いたことがあります。奨学金は、MBA受験上、相当パワフルな要素なのです。
03 GMATの点数
上記の1.2の要素は、これまでの社会人として生き様全てなわけなので、もし、受験生が30歳前後であれば、今からなかなか挽回することが難しい部分といえます。これらを所与として受験戦略を練るしかないのです。しかし、GMATは、全ての受験生に平等に与えられたチャンス。客観的に受験生の頭のよさ・優秀さを大学にアピールするツールなのです。もし、GMATで自身の差別化ができれば、それだけで受験プロセスが大いに有利になるのです。これは私の感覚ではあるのですが、毎年GMAT受験者数は、800人程度。平均点は540点。日本人のMBA受験生のうち、700点を超えているのは、おそらく50人。730点を超えるが10人程度というイメージだと思います。何を言いたいかといいますと、私費生にとっては、GMATが何よりも大切。最低700点、うまくいって730点を取ってしまえば、どの学校でも射程圏内といえるでしょう。よく、GMATよりエッセイが大事だとか、「GMATは680点で十分」いう人がいますが、その考えは甘いし、受験生がとてもユニークなバックグランドをもっている前提の話だと思います。700点を超えれば、その年の日本人の中でトップ50位には入れる。逆に680点だと、同じような点数の日本人がさらに50-100人以上はいることになるので大衆に埋もれた存在。20点の差といえども、その差は想像以上に大きいのです。一方、GMATだけよくても、それだけではトップスクールに合格しないのも事実。ベストなシナリオは、GMATは早めに700点、できれば、720/730点をとってしまい、残りの期間で、エッセイネタを作り、自分磨きに力を注ぐことができれば完璧です。
04 賞などの受賞歴
MBAの受験書類は、Websiteのフォームに必要事項を入力して作成するのですが、その中トップページに、賞の受賞暦はあるかという問いがあります。アメリカですと、大学時代に成績が優秀だと表彰をされたり、優秀さを証明する制度がいくつかあります。一方、日本では、そのような制度がないため、ついつい空欄にしてしまいがちですが、例えば、あるスポーツで全国大会xx位とか、数学オリンピックxx位とか、勉学にかぎらず、あらゆる分野でトップの成績を残した人は、それだけでアドミッションの目にとまり、評価される傾向があります。事実、私のDukeのクラスメイトには、メキシコ人で、元フェンシングメキシコチャンピンであったり、新体操の選手、さらにはプレイボーイの表紙を飾ったことのある女性もいました。
05 エッセイ
学校によりフォーマットは様々ですが、多くの学校で「Goal Essay」、「Leadership/Team work Essay」、「Contribution Essay」が課されます。「Goal Essay」では、あなたの目標・夢は何か、なぜMBAがこのタイミングで必要なのか説明します。「Leadership/Team work Essay」では、あなたの会社・社会でのリーダーシップ、チームワークの経験で、いかにインパクトを与えたのか、そして将来リーダーとなる素質をもっていることをアピールします。そして、「Contribution Essay」では、学業面以外で、クラス・学校にどんな貢献ができるのか、どれほど面白いやつなのかを伝えることになります。
重要なことは、エッセイの読み手は、人間であるということです。しかも、30代-50代のMBAホルダーもしくはそれに類する米国人エリートと考えたほうがよいです。そして、MBA受験生は、概して皆似たようなストーリーをエッセイに書く傾向にあることも忘れてはなりません。
ですので、エッセイの狙うべきターゲットは、「相手を感動させて泣かせてやる」くらいのレベルを目指さなければなりません。あるアドミッションがエッセイを読んだあと、同僚のアドミッションに「このエッセイ本当にすごいわ」と回覧されるレベル、エッセイの評価が5点満点とすれば、複数の人から5点満点をもらえるエッセイ。作文コンクールでいけば、間違いなく特選レベル。そうしなければ、毎日、何十通も来るアプリケーションの山に埋もれてしまいます。むしろ、そこまで練りに練ったエッセイであれば、アプリケーションのプロセスを優位に進めます。実際、トップ校に合格した友人の多くは、エッセイに6ヶ月ほど費やし、練りに練った、とっておきのストーリーで攻めています。誰もがユニークな自分史をもっているはずで、自身のユニークさをいかに引き出せるかにかかっています。私自身、親も含め、海外経験が全くなく、農家出身。一時は、帰国子女で海外経験がある人がうらやましいと思っていたのですが、発想の転換で、「MBA目指す人の中で、リアルに、田植えとか農業やったことある人ってもしかして自分しかいないんじゃないか?」と思い、その経験とMBAの受験動機をうまく結び付け、Diversityをアピールするエッセイを書いたこともありました。受験生のアイディア次第で勝負できる分野ですので、エッセイの面白さでは日本人ナンバーワンになることを目指して取り組むとアドミッションに刺さるエッセイになるのではないでしょうか?
06 TOEFLの点数
TOEFLはMBA受験の一番の鬼門で最も時間のかかるモジュールとなります。TOEFL100点でもトップスクールは狙えますが、最低105点はほしい。欲を言えば、109点があれば、アドミッションからかなり英語力があると見られるという優位性もあります。しかし、TOEFLはあくまで足きりの要素であって、差別化を図る分野ではないため、いかに効率的に短時間で必要点数を揃えるかが重要となってきます。注意しなけらばならないのは、学校によっては、105点では十分でないと判断する学校があることも事実です。学校ごとに過去の合格点数を分析して、TOEFLにゆるい学校かどうかを厳密に調査する必要があります。
07 英語スピーキング力(面接)
英語のスピーキング力が試されるのは、TOEFLと面接のみ。面接の評価項目のなかには、当然、英語の流暢さという項目があり、5点満点で4点は最低とりたいところ。面接の練習に時間を割ければ、英語の流暢さも大幅に改善できると思います。また、面接では、学校とのフィット感を見られています。日本人と面接するときは、日本人のノリにあわせて、オンキャンパスで面接するときは、ナイスガイでいて、相手を楽しませるような面白いヤツでいることです。日本人の寡黙さは間違いなくマイナス評価になりますので、相手に応じてスタイルをかえる柔軟さが大切です。
08 ユニークな海外での経験
世界がグローバル化といわれていることもあり、大学側もグローバル人材を欲しがっています。大学から評価される出願者は、グローバル経験豊かな人。「自分は、帰国子女でもない、海外は旅行でハワイぐらいしたことがいったことがないです」という人には、是非、会社の海外駐在に応募して、アジアでもどこでもいいので、受験前に海外経験をつむことをオススメします。英語上達にも役に立ちますし、何より、そのユニークな経験が、エッセイのストーリーを面白くしたり、話しネタが増え、アドミッション受けが相当よくなります。
09 出身大学、大学での成績
日本の出身大学については、選考上それほど大きな影響はないと思います。大学ごとの細かい差は意識せず、おおよそ、Rank1/Rank2/Rank3みたいな分け方をしている程度ではないでしょうか。一方、アメリカの大学を卒業している人は、大学側が、そのレベル感を理解しているため、トップスクールを卒業している場合は、プラスに働くケースが多いのではないでしょうか。また、大学時代の交換留学の経験もプラスに評価される傾向にあり、特に、アメリカのトップスクールに留学した人は、高評価を得ている傾向にあると思います。
むしろ、大学側が気にしているのは、大学時代の成績。GPAという評価基準で、4.0が最高で、トップMBAの合格者の多くが3.5を超えている。一方、多くの日本人は、大学時代授業をまじめに受けない人が多いため、GPAは総じて低い。アドミッションもそのあたりは理解していて、GPAが悪い=致命的な欠陥とはとらえないため、正直あまり気にしなくてよい点ではないでしょうか。私自身、GPA2.9でしたが、受験上不利であると感じたことはなかったため、低GPAでも気にする必要はないと思います。
10 推薦状
推薦状はあくまで補完材料であって、有名人の推薦状や社長の推薦状によって、他のアプリカントと差をつけようと思っても、なかなかうまくいかないのが現実です。むしろ、全体としての一貫性が重要で、エッセイで書いた内容通りの人間であることを証明する書類といってよいのではないでしょうか。ですので、自分のことをよく理解してくれて、MBA受験を応援してくれている上司、取引先の方々にお願いするのが正攻法といえます。アドミッションは、エッセイと推薦状を同時に読みますので、一貫性がなければ、違和感を感じ、エッセイの評価が悪くなるかもしれません。ですので、推薦状はあくまで守りのツールと理解するのがよいでしょう。